不眠症の原因と改善に役立つ栄養素とは

こんな方におすすめ
  • 不眠症になる原因って?
  • 不眠症が続くと考えられる病気は?
  • 不眠症の改善は、どんな方法があるの?

不眠症は、多くの人が経験する不定愁訴の一つで、日本は、世界でトップクラスの「眠れていない国」と言っても過言ではありません。

疲労感や集中力低下など、仕事や日常生活に大きな影響を及ぼすだけでなく、中には精神疾患や生活習慣病などの重大な病気が隠れている場合もあります。

そこで今回は、不眠症の症状と原因、不眠症に隠れている病気、さらに食事・栄養や生活環境の観点から、不眠症の改善方法を解説します。

食生活を中心とした栄養管理を見直すことが健康に繋がる第一歩になりますので、この記事を参考に見直してみるといいでしょう。

監修者

株式会社サムライフ 代表取締役 坂田 武士

薬剤師の経験を経て、薬に頼らない予防医学の専門家として従事。「日本の死因の第一位を老衰死にする」を目標に掲げ、過去20年間にわたる予防医学や栄養学に関する膨大な臨床実験と、延べ5万人に対する予防医学の指導を経験。

病院の院長や、管理栄養士、パーソナルトレーナーなど、健康を指導する立場の人間や、オリンピックメダリストをはじめとしたトップアスリートへの指導も行う。

著書:
4日間で脂肪だけをキレイに落とす本 筋肉を落とさず健康的にやせる!
『薬をすすめない薬剤師が教える 脱・薬健康法

目次

不眠症とは

不眠症とは

不眠症は不定愁訴の一つで、満足な睡眠が得られず、その状態が続くことを指します。

単に睡眠時間が短い「睡眠不足」とは異なり、夜間の睡眠障害に加え、日中の倦怠感、意欲低下、集中力低下、食欲低下などの症状が生じ、生活の質や仕事の効率が低下します。

不眠症の主な症状

不眠症には主に次の症状があり、同時に複数現れることもあります。

不眠症の主な症状
  • 入眠困難(寝つきが悪い)
  • 中途覚醒(夜中に何度も目が覚める)
  • 早朝覚醒(朝早く目が覚め再び眠れない)
  • 熟眠障害(眠りが浅く熟睡感が得られない)

不眠が続くと、睡眠による休養感が得られず、疲労感や倦怠感、注意力の低下、仕事の効率低下、体調不良などが生じます。

これらの症状が慢性化し、日常生活に支障を来す場合は「不眠症」と診断されます。

また、不眠は生活習慣病などさまざまな病気とも関連があるため、軽視せず適切な対策を講じることが重要です。

5人に1人が不眠症

日本では、約5人に1人が不眠の症状に悩んでおり、加齢とともに増加する傾向があります。

特に40代では30.9%が「睡眠で十分な休養が取れていない」と回答しており、経済協力開発機構(OECD)の調査では、日本の平均睡眠時間は33カ国中最低という結果が出ています。

不眠症が起こる原因

不眠症が起こる原因

不眠症が起こる原因として、腸内環境の悪化、睡眠環境が適切でない場合や、加齢・ホルモンバランスの変化、薬や刺激物による影響などがあげられます。

特に、ストレスが関与することが多いため、食生活習慣の見直しやストレスの緩和が重要となります。

不眠症が起こる原因
  • 腸内環境の悪化
  • 睡眠環境が適切でない
  • ストレス
  • 加齢やホルモンバランスの変化
  • 薬や刺激物の影響
  • 生活習慣の乱れ

腸内環境の悪化

腸内環境の悪化は、不眠症の大きな原因の一つです。

腸は単なる消化器官ではなく、「第二の脳」とも呼ばれ、自律神経や腸内細菌を介して脳と密接に連携しています。

このような腸と脳の相互関係は「腸脳相関」と呼ばれています。

例えば、強いストレスを受けると胃腸の調子が悪くなったり、緊張するとお腹が痛くなったりすることがあります。

また、腸内環境が悪化するとセロトニンの生成が減り、精神的な不安やストレスが増すこともあります。

腸内では、セロトニンの90%が生成され、これが脳内で変換されてメラトニンとなり、睡眠の質を調整します。

セロトニンのもととなるトリプトファンは必須アミノ酸であり、腸内環境が悪化するとその代謝が滞り、セロトニンの不足を招きます。

このように、腸と脳は互いに影響を及ぼし合い、腸内環境の悪化が睡眠の質の低下を引き起こし、不眠症につながります。

睡眠環境が適切でない

睡眠環境が適切でない場合、不眠を引き起こしやすくなります。

寝室が明るすぎたり騒音があったりすると眠りが妨げられるほか、温度や湿度が快適でない場合も影響を及ぼします。

また、時差ボケや夜勤などで生活リズムが崩れると、体内時計が乱れ、自然な眠りを得にくくなります。

ストレス

仕事や人間関係の悩み、将来への不安などのストレスは、脳を興奮状態にし、寝つきを悪くします。

特に、神経質で生真面目な性格の人は、不眠に対するこだわりが強くなり、眠れないことへの焦りがさらに不眠を悪化させることがあります。

また、「眠れなかったらどうしよう」と考えることで緊張が高まり、結果として余計に眠れなくなるという悪循環に陥ることも少なくありません。

加齢やホルモンバランスの変化

身体的な要因では、加齢に伴う変化が影響を及ぼします。

一般的に、年齢を重ねると深い眠りの時間が減少し、夜中に目が覚めやすくなる傾向があります。

特に女性は、ホルモンバランスの変化により、月経前や更年期に不眠を感じることが多くなります。

薬や刺激物の影響

薬の影響で、不眠を引き起こすこともあります。

降圧剤や甲状腺製剤、抗がん剤、抗ヒスタミン薬などの副作用として不眠が生じることがあります。

さらに、カフェインやニコチン、アルコールの摂取は覚醒を促し、睡眠の質を低下させる原因となります。

寝る前の飲酒は一時的に眠気を誘うものの、睡眠の質を低下させるため、結果として夜中に目が覚めやすくなります。

生活習慣の乱れ

生活習慣の乱れも不眠の一因となります。

寝る直前にスマートフォンやテレビを見たり、カフェインを摂取したりすることで脳が刺激され、眠りにつきにくくなります。

また、日中に長時間昼寝をすることで、夜の睡眠に影響を及ぼすことがあります。

眠れないことを気にしすぎるあまり、無理に眠ろうとすることで緊張が高まり、結果として不眠が悪化するケースもあります。

睡眠の役割と重要性

睡眠の役割と重要性

睡眠には、脳や交感神経を休ませる、成長ホルモンを分泌し代謝を促進する、記憶の定着と整理を進めるという、重要な役割があります。

睡眠不足が続くと「睡眠負債」が蓄積され、心身のパフォーマンスが低下します。

質の良い睡眠を確保するためには、6時間以上の快適な睡眠時間を確保し、寝付きが良く、途中で目が覚めないことが重要です。

また、「休養」は「休む」と「養う」の2つの意味を持ち、心身の疲労回復と明日への活力を養うことが重要です。

十分な睡眠時間の確保は、予防医学の観点からも大切であり、不眠が慢性化する前に適切な対策を講じることが必要です。

不眠症に隠れている病気

不眠症に隠れている病気

精神疾患は、不眠と密接な関係があります。

うつ病や不安障害、統合失調症などの精神疾患や、高血圧や糖尿病などの生活習慣病などを抱えていると、不眠が症状の一つとして現れることが多くなります。

不眠が長期間続くことで、「眠れないこと」に対する恐怖心が生じ、さらに不眠が悪化するという悪循環に陥ることもあります。

単なる不眠だと思っていたら、実は精神疾患や生活習慣病が原因だったというケースもあるため、気分の落ち込みや意欲の低下が見られる場合には、早めに専門医の診察を受けることが重要となります。

不眠症の改善方法

不眠症の改善方法

快眠のためには、「睡眠ホルモン」であるメラトニンと、「幸福ホルモン」であるセロトニンが重要です。

不眠症を改善するためには、ストレスの軽減や食事・栄養素の見直しが大切ですが、腸内環境を整えることも重要な役割を果たします。

食習慣の見直しによる腸内環境改善

不眠症を改善するためには、食習慣を見直し、腸内環境を整えることが重要です。

腸内では神経伝達物質のセロトニンが90%生成され、これが脳内でメラトニンに変換されて睡眠の質を調整します。

腸内環境を整えることでセロトニンの生成が活発になり、メラトニンの分泌も促され、自然な眠りを取り戻しやすくなります。

腸内環境の改善には、1日3食バランスの良い食事を摂り、発酵食品や食物繊維を積極的に取り入れることが大切です。

また、セロトニンの材料となるトリプトファンを多く含む食品(大豆製品、乳製品、ナッツ類、肉、魚など)を摂取することも効果的です。

さらに、トリプトファンからセロトニンを合成するにはビタミンB6や鉄が必要で、レバー、魚、玄米、ほうれん草、貝類などに多く含まれています。

栄養素をバランスよく取り入れ、腸内環境を改善することで、セロトニンとメラトニンの生成がスムーズに行われ、質の高い睡眠につながります。

関連記事:腸内環境を改善する方法について解説

不眠症の改善に必要な栄養素と目標量

不眠症を改善するためには、必須アミノ酸であるトリプトファンや、ビタミンB6、鉄などの栄養素を十分に摂取し、バランスのとれた食事を心がけることが重要です。

不眠症改善に必要な栄養素(目標量)
  • トリプトファンタンパク質の目標量は体重×1.2~1.5倍)
    必須アミノ酸のトリプトファンです。体内に入って脳に運ばれた後、セロトニンに変化します。トリプトファンは主に、肉・魚・大豆・乳製品などの食品のタンパク質多くに含まれています。
  • ビタミンB6(7㎎)
    セロトニンの合成を助け、脳を正常に保つ役割があります。レバー、魚、玄米などに豊富に含まれています。
  • (15㎎)
    トリプトファンからセロトニンを合成する際に必要な栄養素です。レバー、貝類、ほうれん草などに豊富に含まれています。

関連記事:目標量について

生活習慣による改善方法

質の高い睡眠を得るためには、生活習慣を整えることが重要です。

まず、朝はしっかりと朝日を浴びることでセロトニンの分泌が促され、体内時計を整えます。

夜は明るすぎる光を避け、リラックスできる環境を整えることで、メラトニンの分泌が促され、自然な眠りへと導かれます。

カフェインやアルコールの摂取を控え、規則正しい生活を心がけることも不眠改善につながります。

適度な運動(ウォーキングやストレッチなど)を行い、腸の蠕動運動を促すことも大切です。

また、十分な睡眠と休養を確保し、自律神経のバランスを整えましょう。

腸と脳は密接に関係しており、精神的なストレスが腸内環境を悪化させることがあります。

リラックスできる時間を作り、ストレスを溜め込まないことが重要です。

ヨガや瞑想、深呼吸を取り入れることで、自律神経を安定させ、心身の健康を維持しながら快適な眠りを得ることができます。

まとめ

今回は、不定愁訴の一つである不眠症が起こる原因や、改善方法について解説してきました。

不眠症の改善には、必須アミノ酸であるトリプトファンや、ビタミンB6、鉄などをバランスよく摂取し、生活習慣を見直すことも大切です。

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